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清原 慶子(杏林大学客員教授・こども家庭庁参与(前三鷹市長))
特別区長会調査研究機構の設置の意義と調査研究への期待
杏林大学客員教授・こども家庭庁参与(前三鷹市長)
清原 慶子
平成31(2019)年の新春を迎え、世界の平和と地域の平和、皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈りいたします。
平成30(2018)年は、6月の大阪府北部地震、7月の西日本豪雨被害、8月の猛暑と多数の台風襲来、9月の北海道胆振東部地震発生、10月の台風24号の暴風被害というように、自然災害が多い年でした。
また、グローバルには、米国、中国、北朝鮮、ロシア、ヨーロッパ等の情勢が、いずれも日本に大きな社会経済的な影響をもたらしています。
そうした中、東京都の特別区長会は、6月15日に、大学その他の研究機関、国及び自治体と連携して特別区長会の諸課題を検討し、発信力を高めることを目的として、会長の西川太一郎・荒川区長のリーダシップのもとに、本調査研究機構を設置されました。
私は、元大学教員であり、全国市長会の副会長や国の各種審議会委員を務めていることなどの経歴を尊重していただき、顧問を拝命致しましたことは、まことに光栄であり、身の引き締まる思いです。東京都の26市の市長の一人である私にとって、貴機構に期待する機能は、政策に関する調査研究と実践のPDCAサイクルが主体的に回されるということであり、首都東京を構成する重要な自治体である特別区の皆様が、貴機構を設置されたことの意義は極めて大きいと認識しています。
さて、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国によって全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されたのが、2016年から2030年までの国際目標「SDGs」です。「SDGs」とは「持続可能な世界を実現するための目標(Sustainable Development Goals)」であり、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー・平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「働き甲斐も経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任、つかう責任」「気候変動に具体的な政策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」「平和と公正をすべての人に」「パートナーシップで目標を達成しよう」という17の目標で構成されています。
何よりも、地球上の誰一人として取り残さない「包摂性」、先進国にも途上国にも適用される「普遍性」、国や地域での「多様性」の担保、経済・社会・環境の3つの次元の「統合性」、具体的行動に結び付ける「行動性」を特徴としています。
「持続可能な世界を」との視点に立って、多様な課題の解決を図ろうとする世界共通の目標の存在を知る時、私は、改めて私たちが活動する主たる暮らしの現場は、それぞれの働く場所、学校等の学ぶ場所、特別区や三鷹市を含む「地域社会」であることを再確認します。
そして、平成31年度の調査研究テーマの中に、「『持続可能な開発のための目標(SDGs)』に関して、特別区として取り組むべき実行性のある施策について(荒川区)」が提起されています。また、「特別区が取り組んでいる施策の効果が日本全体に与える影響(港区)」「特別区のスケールメリットを生かした業務効率化(渋谷区)」「大局的に見た特別区の将来像(江戸川区)」といった広い視点の研究テーマがあります。
さらに、「自尊感情とレジリエンスの向上に着目した、育児期女性に対する支援体制構築に向けての基礎研究(板橋区)」「特別区における小地域人口・世帯分析及び壮年期単身者の現状と課題(基礎調査)」といった、「誰一人として取り残さない」ための研究テーマが提示されています。
こうして、貴機構における来年度の調査研究テーマは、まさに、ローカルにも、グローバルにも、具体的施策に生かされることが期待されるテーマであると思います。
新年を迎えて、貴機構の皆様の多様な調査研究活動を通して、「地域で誰一人として取り残さない」ように、基本的人権が尊重され、一人ひとりが自己実現できる地域社会が目指されていくことを期待しています。